Google mapを使ったペルシャ絨毯アートとwar rugについて


GIZMODEが4/4に、アイルランド在住のアーティスト、デビッド・トーマス・スミスさんの、
Copper House Galleryで開催されている個展「ANTHROPOCENE」についての
こんな記事を掲載していた。

Google Mapsがペルシア絨毯風アートに
Gooele Mapsの衛星写真って、その土地ごとにいろんな表情があります。大きな建物とか川とか公園の緑とか高速道路のカーブとかが組み合わさって、絵として見ても面白いことがあります。アイルランド在住のアーティスト、デビッド・トーマス・スミスさんはGoogle Mapsの中のそんな要素を捉えてPhotoshopで加工し、ペルシア絨毯の文様に仕立てています。

要約すると、Google mapを利用してペルシャ絨毯文様のアートを作る。
こんなアート。
これはメダリオンコーナーデザインの未来的なペルシャ絨毯文様。
ギャラリーのサイトの方にはたくさん掲載されている。



個展の説明の英文の和訳をGIZMODEが掲載しているので引用。
Anthropoceneは、世界の資本主義の中枢をなす複雑な構造を反映しています。資本主義は、石油や貴金属、消費者文化といった産業関連の場所の風景を変化させています。衛星写真という一見ありふれた情報が絨毯の織り目のように結びつくことで、より大きなものを見せてくれます。写真に表現された経済的現実が、古代ペルシア文明に起源を持つ文様によってさらに複雑な問いを発しています。 この作品ではペルシャ絨毯職人の使う文様やモチーフを使い、特にアフガンの職人が絨毯にその体験を織り込むことで戦争で荒れた土地をより鮮明に記録する手法にならっています。この新と旧、事実と虚構、見えるものと見えないものの衝突により、世界秩序を作品に映し出したいと考えています。

たぶん、GIZMODEの記事を読んだ方のほとんどは、特にアフガンの職人が絨毯にその体験を織り込むことで~
の部分を読んで、それがどんなものかを具体的にイメージすることはないと思う。
アフガニスタンのバルーチ族は、しばしば絵画的な絨毯を織る。

以前にアフガンのピクトリアル絨毯についての記事で、
伝統的な技法を使ってポップなビル柄を描いたことに不思議な違和感を感じたと書いた。
そんな違和感を、たぶんこの作者のデビッド・トーマス・スミスさんも感じて、
違う形で表現しようとされたのかなという気がする。

特にピクトリアル絨毯の中でも、ウォーラグ(war rug)というものがあり、
それはまたいつかご紹介すると言ったままだった。

絨毯に銃や戦車や戦闘機など戦争をイメージするイラストが織り込まれているタイプのもの。

アフガニスタンは戦争が長く身近であった国。
それを外の国の人にも感じてもらうために、伝統的な絨毯織りの技法で、
長く伝えていこうという思いが込められているのかと思う。
デビッド・トーマス・スミスさんは逆に、現代のGoogle mapを利用して、
古典的デザインを通して問題提起をしている。

war rugは、日本人にはほとんど馴染みはないものだけど、
欧米では専門に紹介するのサイトも存在するほど、ひとつのジャンルとして
確立されている。

欧米のサイトからご紹介するより、
もう少し身近なところで、2012年4月(No.145)のCASA BRUTUSより。

表紙の左下、一見ポップでかわいらしい、オレンジ色の絨毯がwar rug。



拡大。銃や、船団、手投弾のようなものも見て取れる。
ボーダー部分だけは、唯一伝統的なデザインを残している。




遊び心(というか遊び場そのもの)のある、かっこいいインテリア。
シューズデザイナー、ファッションデザイナーの三原康裕さんの家。




インテリアが素敵、という方向にちょっと落ち着いてしまったわけですが…。


今回、war rugをあらためて検索していたら2004年のSHIFTの古い記事で、
4U・ラグ・エキシビジョンというのが開催されていたと知った。

日本のアーティストとアフガニスタンの職人たちとのコラボレーションで
ピクトリアルラグを制作するというもの。
10年近く前に、こんなプロジェクトが行われていたとにちょっと驚きを感じた。

でも書きながらよく見ていたらこの中の画像に、見覚えがあるものも。
浅野忠信、タナカカツキ、生意気、など有名な名前が並んでいるから、
当時もなんとなく意識したのかもしれない。

終わりに、記事の一部引用。
今回のプロジェクトのきっかけとなった「WAR RUG」と呼ばれるラグの存在がある。これは、戦争を直接的に批判するデザインが織り込まれた「画報」の意味合いが強く、誰の作品かはわからない。半永久的な耐久性をもつラグに込められたそのメッセージは、見る人に強く、そして長く届けられる。

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